
なぜ「転職したのに後悔する人」が後を絶たないのか
「条件は良かったけど、入社してみたら雰囲気が合わない」
「仕事内容は希望通りなのに、思っていた成長環境じゃなかった」
──転職相談の現場で、こうした“入社後ギャップ”の相談を受けることは珍しくありません。
私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界で人事部長を歴任し、延べ5,000人以上を採用面接してきました。
その経験から断言します。
「転職の失敗の多くは、“選び方”の失敗であり、“働き方”の失敗ではない。」
つまり、入社してから「合わなかった」と気づくのでは遅い。
転職を成功させるには、“企業選びの軸”を明確に持つことが何より重要なのです。
失敗談に学ぶ「条件で選んだ人」が後悔する理由
事例①:年収アップだけで転職した30代営業職
「給料は上がったけど、社風が合わない」
Aさん(32歳)は前職より年収80万円アップで転職。
しかし実際に入社してみると、ノルマ至上主義の風土で心身が疲弊。
半年で退職しました。
元建設業界人事としても感じていたことですが、
「数字さえ出せばいい」環境は一部の人にしか合わない。
キャリアの“価値観軸”を無視すると、報酬では埋まらない後悔を招きます。
事例②:やりがいを求めて福祉業界へ転職した40代男性
前職のIT企業を辞め、「人の役に立ちたい」と児童福祉業界へ。
しかし、実際は給与が下がり生活が苦しくなり、やりがいと現実のギャップに悩むことに。
児童福祉の世界では「理念共感」は大切ですが、生活の安定とのバランス設計が不可欠。
“理想だけ”で選ぶと、長く続かないのです。
事例③:有名企業に惹かれた20代WEBデザイナー
華やかな大手WEB会社に入社したものの、実際は分業制で裁量が少なく、成長実感が得られず退職。
💬 WEB業界では「自由に挑戦できる」と思いがちですが、
大手ほど組織の歯車になるリスクもあります。
データで見る“転職後の後悔”の実態
厚生労働省『令和6年版労働経済白書』(https://www.mhlw.go.jp/)によると、
転職後1年以内の離職率は 31.5%。
その理由の上位は以下の通り。
| 離職理由 | 割合 |
|---|---|
| 仕事内容が合わなかった | 28.9% |
| 労働条件が悪かった | 22.7% |
| 職場の人間関係 | 17.3% |
つまり、“仕事内容と価値観のズレ”が最大の要因。
これを防ぐためには、「自分に合う会社」を探す前に、「自分の軸」を見つける必要があります。
元人事部長が見てきた、転職後も満足している人の共通点
3業界で数多くの社員定着を見てきて、長く活躍している人には共通点があります。
- 転職前に“何を優先するか”を明文化していた
- 業界研究をして“働き方の違い”を理解していた
- 自分の価値観と会社のミッションが一致していた
彼らは「条件の比較」ではなく、「人生の設計図の中での転職」をしていました。
だから、入社後も迷いが少ないのです。
企業選びの軸をつくる3ステップ戦略
ステップ①:自己理解──“譲れない3条件”を洗い出す
まずは、紙にこう書いてみましょう。
Q1. 給与・働き方・やりがいの中で、どれが最優先?
Q2. どんな環境で力を発揮できる?
Q3. どんな働き方なら10年続けられそう?
この3問に答えると、「価値観軸」が見えてきます。
例:
- 成長重視 → ベンチャー/裁量の大きい職場
- 安定重視 → インフラ・建設業界など
- 貢献重視 → 教育・福祉・NPO系
💡元WEB業界人事時代に採用した30代の方は、「家族との時間を確保できる職場」を軸に転職し、
年収を維持しながら週休3日制度の企業に入社。結果的に生産性も上がりました。
ステップ②:情報収集“企業文化”を見抜くリサーチ法
求人票だけで企業を判断するのは危険です。
本当に見るべきは「現場のリアル」。
確認すべきポイント:
- 社員インタビュー・note記事のトーン
- 口コミサイト(OpenWork・転職会議)の共通キーワード
- 採用担当者・社員の発信内容(SNSやWantedly)
たとえば「風通しが良い」と書かれていても、
実際は“会議が多くて意見が通らない”ケースもあります。
言葉の“中身”を読み取ることが大切です。
ステップ③:比較分析──3業界で見る「企業選びの基準」の違い
| 業界 | 評価軸 | 向いている人の特徴 |
|---|---|---|
| WEB | 成果主義・スピード | 自己成長・変化対応が得意 |
| 児童福祉 | チーム重視・理念共感 | 協働・共感力が高い |
| 建設 | 現場力・責任感 | 堅実で管理能力に優れる |
同じ「企業選び」でも、業界が違えば求められる人材像も真逆。
だからこそ、「どの業界文化にフィットするか」を基準に考えるのが正解です。
面接で見抜く!「この会社は合う/合わない」の判断ポイント
① 社員の口調・表情を見る
現場社員が“誇りを持って話しているか”は最重要。
無表情・形式的な説明なら、エンゲージメントが低い可能性。
② 面接官が「質問を深掘りしてくる」か
良い企業は、応募者を“見極める”だけでなく“理解しよう”とします。
質問が浅い会社は、採用後のミスマッチリスクが高い。
③ 「この会社でどう成長できるか」が明確か
説明が曖昧な場合、教育・評価制度が整っていない可能性。
💬 WEB業界の優良企業は「入社3か月後の成長イメージ」を具体的に示します。
データが示す“企業選びに成功した人”の特徴
マイナビ転職2024調査(https://tenshoku.mynavi.jp/)によると、
転職後の満足度が高い人の共通点は以下の通り。
| 項目 | 満足者の割合 |
|---|---|
| 企業選びの基準を明確にしていた | 82% |
| 複数社を比較して検討した | 76% |
| 面接で職場環境を質問した | 68% |
逆に、不満足者の7割は「なんとなく条件で選んだ」と回答。
つまり、選び方の“意識の深さ”が結果を左右するのです。
元人事が語る、企業側が「長く働いてほしい」と思う人
私は面接のとき、候補者のスキルよりも「企業選びの軸」をよく聞いていました。
その理由は、“軸がある人は辞めない”からです。
実際に、長期定着して活躍している社員に共通するのは以下の3点。
- 「なぜこの業界・会社を選んだか」が言語化されている
- 会社に求めることと、自分が提供できる価値が釣り合っている
- 理想と現実のギャップを理解している
逆に、「とりあえず転職した」人ほど、1年以内に転職活動を再開していました。
キャリア設計の観点から見る「企業選びの3軸」
転職成功者が持っている軸は、以下の3つに分類できます。
| 軸の種類 | 内容 | 質問例 |
|---|---|---|
| 成長軸 | 自分のスキル・キャリアを伸ばせるか | 「3年後、どう成長できる環境か?」 |
| 価値観軸 | 社風・理念が自分に合うか | 「大切にしている価値観は何か?」 |
| 生活軸 | 働き方・報酬・ワークライフバランス | 「生活とのバランスが取れるか?」 |
この3軸を優先順位づけし、1~3の点数をつけることで、客観的に企業を比較できます。
💡ポイント:どんな会社でも100点はない。「どこを60点で妥協できるか」が本質。
明日からできる!「後悔しない企業選び」の3つの行動
- “自分の譲れない条件リスト”を3項目に絞る
→ 書き出すだけで、求人を見る目が変わります。 - 面接で「御社では、どんな人が活躍していますか?」と聞く
→ 採用基準の“裏側”がわかる。 - 入社前にOB・OG訪問を1件する
→ ネット情報では得られない職場リアルが見える。
「自分の人生の主導権を握ること」こそが、後悔しない転職の第一歩です。
軸を持つ人は“会社を選ぶ側”になれる
軸がある人ほど、面接でも堂々と話せます。
そして企業側も、「この人は自分のキャリアを設計できる」と高く評価します。
結果的に、
- 条件交渉がスムーズ
- 入社後のストレスが少ない
- 長期的なキャリア形成が可能
になります。
企業選びの軸=キャリアの羅針盤なのです。
まとめ:転職は“比較”ではなく“設計”
転職は、「どの会社が良いか」ではなく、「どんな自分でありたいか」から始まります。
転職は「勢い」ではなく「設計」。
そして設計には“自分を理解する時間”が必要。
キャリア設計士からのメッセージ
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
自己分析・市場分析・求人戦略を一気通貫で支援。
“転職してよかった”と思える道を一緒に設計します。


コメント