
キャリアチェンジ=年収ダウン、は本当に避けられないのか?
「未経験業界に行きたいけど、年収が下がるのが怖い」
「やりたい仕事と収入、どっちを優先すべき?」
この悩みは、キャリアチェンジ希望者の8割が抱えるものです。
私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界で人事部長として累計200人以上を採用面接してきました。
そして実感しているのは、
「キャリアチェンジ=年収が下がる」は“半分正解・半分誤解”。
実際には、交渉の仕方と市場価値の見せ方次第で、年収維持も十分可能です。
本記事では、人事の評価構造・給与テーブルの仕組み・交渉の実際の現場ロジックを明らかにしながら、
「年収を下げないための戦略設計」を徹底的に解説します。
キャリアチェンジで年収が下がる人の共通点【人事の視点】
① “未経験=立場が弱い”と思い込んでいる
多くの転職者が「自分は未経験だから…」と交渉の主導権を放棄します。
しかし企業側から見ると、「採用したい人」には年収を上げてでも来てほしいのが本音です。
私が建設業界で採用していたとき、40代の異業種転職者が「希望額は御社にお任せします」と言った瞬間、
「交渉できない=自己評価が低い」と判断され、提示額を抑えられたことがあります。
② 自分の市場価値を把握していない
「いくら希望していいかわからない」と言う人ほど、データを調べていません。
たとえばdodaの2024年版平均年収ランキング(https://doda.jp/)によると:
| 業界 | 平均年収(万円) |
|---|---|
| WEB・IT | 436 |
| 建設・不動産 | 468 |
| 医療・福祉 | 377 |
業界が変わると、給与水準も大きく変化します。
つまり、「希望年収」は“業界平均+自分の再現可能スキル”で決める必要があります。
③ 転職理由と交渉理由を混同している
たとえば「やりたい仕事に挑戦したい」ことは転職理由ですが、
それをそのまま交渉材料にしても給与は上がりません。
人事が知りたいのは「あなたを採用したら、どんなリターンがあるのか」。
つまり、“企業視点での交渉軸”を持つことが重要です。
データで見る:キャリアチェンジ後の年収実態
リクルートワークス研究所「転職者実態調査2024」
(https://www.works-i.com/research/)によると、
異業種転職者の年収変動割合は以下の通りです。
| 年収が上がった | 変わらない | 下がった |
|---|---|---|
| 28.4% | 35.6% | 36.0% |
このデータからわかるのは、
約3人に1人はキャリアチェンジ後も年収を維持または上げているということ。
彼らに共通していたのは「交渉前に“情報+実績”で土台を固めていた」という点です。
事例で学ぶ、年収を下げずにキャリアチェンジした3人
① 30代前半:営業職 → ITカスタマーサクセス職
営業経験を「顧客課題解決力」として転用。
転職前に資格(ITパスポート)を取得し、年収480万→490万で維持成功。
ポイント:“即学習型人材”を印象づけた交渉
② 40代前半:保育士 → 人事労務担当
給与体系が低い児童福祉業界からの転職。
「人の育成」と「労務管理」を結びつけ、組織改善に貢献できる点をプレゼン。
年収350万→370万に上昇。
ポイント:“人事視点”を語ることで価値を上げた
③ 30代後半:現場監督 → 建設コンサルタント
「安全管理×工程改善」の経験を可視化し、
採用面接で“リスクマネジメント実績”を数値化して提示。
提示額を50万円上乗せでオファー。
ポイント:成果をデータで語れる人は強い
年収を下げないための“3つの交渉ステップ”
ステップ①:交渉は「内定前」に準備が始まる
面接時点での印象が交渉結果を左右します。
人事は、あなたの「伝え方」から“交渉リスク”を感じ取っています。
💡私の経験上、「給与交渉をしてきそう」と感じる候補者は、逆に評価が高い。
理由は、“自己価値を理解している”=仕事でも交渉力がある人だからです。
準備すべきは次の3点:
- 希望年収を明言できる根拠(市場データ+現職実績)
- 年収以外の条件(リモート・手当・成長機会)を優先順位づけ
- 面接中で自然に「希望額」を伝える練習
ステップ②:「価値換算」で提示額を上げる
交渉は「お願い」ではなく「提案」です。
自分の経験を“企業のコスト削減・利益向上”に変換して伝えましょう。
例文:
「現職では、営業データ分析の自動化を行い、年間約300時間の業務削減を実現しました。
御社でも同様の改善提案を行えると考えています。その成果を踏まえ、年収〇万円を希望します。」
人事は「納得できる数値」に弱い。
感情ではなく、具体的な再現性を見せることが交渉のコツです。
ステップ③:「譲歩条件」を戦略的に設定する
交渉の目的は“最大金額を勝ち取る”ことではなく、
「納得感のある条件で入社する」こと。
例:
「初年度は年収△△万円でも構いませんが、1年後に評価次第で昇給の機会を設けていただけると嬉しいです。」
この一文を添えるだけで、評価制度込みでの交渉に変わり、企業も応じやすくなります。
3業界の給与交渉リアル「交渉が通りやすい業界・通りにくい業界」
| 業界 | 交渉の通りやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| WEB・IT | ◎ | 成果主義・市場競争が激しく柔軟 |
| 児童福祉 | △ | 法制度・予算制約あり(ただし役職交渉は可能) |
| 建設 | ○ | 資格・責任範囲に応じて変動幅あり |
💬 現場経験から言うと、
WEB業界は「成果プレゼン型」交渉、
建設業界は「資格・責任範囲型」交渉、
福祉業界は「理念・定着意欲型」交渉が有効です。
人事の本音──年収交渉で「上げたい」と思う人の特徴
- 数字で語れる(成果を定量化できる)
- 論理的で感情的でない(納得感がある)
- 誠実な姿勢で話す(強気ではなく“根拠あり”)
- 企業の立場を理解して話せる(相手軸で伝える)
人事が嫌うのは「感情的な要求」ではなく、「準備不足の交渉」。
逆に“論理的で誠実な交渉”はむしろ評価が上がります。
交渉の現場で使える!人事に響くフレーズ集
| 目的 | フレーズ例 |
|---|---|
| 希望年収を伝える | 「これまでの経験を踏まえると、〇万円前後が妥当と考えています。」 |
| 上乗せを狙う | 「成果ベースで評価いただける仕組みがあれば、もう少しチャレンジしたいです。」 |
| 年収以外で交渉 | 「年収は現状維持でも構いません。その代わりに裁量の幅を広げていただけますか?」 |
| 誠実さを印象づける | 「御社の制度に合わせる形で柔軟に考えたいと思っています。」 |
どのフレーズも「対話型」であることがポイント。
一方的な要求ではなく、“提案+柔軟性”が信頼を生みます。
元人事が教える、交渉を有利にする「3つの準備ツール」
- 市場価値診断レポート(MIIDAS・doda年収査定など)
→ 希望額の根拠として提示できる。 - 実績ポートフォリオ(数値成果・提案資料など)
→ 目で見せられる資料は交渉効果大。 - キャリアシート(貢献領域を整理)
→ 面接官が評価をまとめやすく、年収上乗せに繋がる。
「交渉力=キャリア資産」の時代へ
交渉力とは、単なる給与の話ではなく、
“自分の価値を言語化し、他者に伝える力”。
この力を持つ人は、転職市場で長期的に評価されます。
年収を下げずに転職できた人の多くが、その後も昇進・昇給を実現しています。
実際に、私が採用した“交渉上手な人材”は、入社後3年以内に年収が平均15%上がっています。
明日からできる3つの行動プラン
- 自分の希望年収を「根拠つき」で言えるようにする
→ 業界平均+自身の成果を掛け算で算出。 - 交渉の練習を“友人やコーチ”とロールプレイする
→ 感情的にならず話す練習を。 - “譲れない条件リスト”を紙に書く
→ 年収以外(リモート・成長機会・環境)も整理しておく。
まずは1つだけでOK。
「希望額を根拠を持って言う」ことから始めましょう。
それが“自分の価値を守る第一歩”です。
まとめ:キャリアチェンジは「再スタート」ではなく「再評価」
キャリアチェンジで年収を下げない最大のポイントは、
“未経験者”ではなく“異業界の即戦力”として自分を設計すること。
転職は「勢い」ではなく「設計」。
そして設計には“自分を理解する時間”が必要。
キャリア設計士からのメッセージ
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
自己分析・市場分析・求人戦略を一気通貫で支援。
“転職してよかった”と思える道を一緒に設計します。


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