
「3年働いたし、そろそろ転職かな」と思ったあなたへ
新卒入社から3年──。
周りの同期が転職を始めたり、後輩が入ってきて立場が変わったり。
「このままここにいていいのか?」
「転職したほうが成長できるのでは?」
そんなモヤモヤを抱えていませんか?
リクルートワークス研究所の調査によると、**入社3年目で転職を検討する若手は全体の64.2%**にのぼります。
(出典:リクルートワークス研究所『若手社員のキャリア意識調査2024』)
しかし、人事として何百人もの転職を見届けてきた立場から言えば──
“転職する前の棚卸し”をしていない人ほど、転職後に後悔しやすい。
私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界で人事部長を務め、
採用から育成・離職防止まで一貫して関わってきました。
その経験上、「3年目での転職」はチャンスにもリスクにもなります。
この記事では、
- なぜ3年目がキャリアの分岐点になるのか
- 転職前に必ずやるべき“キャリア棚卸し”の方法
- 後悔しない転職判断を下すための実践ステップ
を、現場の人事経験に基づいて徹底解説します。
なぜ「新卒3年目」はキャリアの分岐点なのか
3年目で見えてくる「自分の限界」と「職場の天井」
入社1〜2年目は“学びの時期”ですが、3年目になると仕事の全体像が見え始めます。
自分の得意・不得意、会社の成長スピード、上司との相性、将来像──。
そのすべてが、ようやく輪郭を持つタイミングです。
しかし、この“見えてきた感覚”が、逆に迷いを生むことがあります。
「自分の成長が止まっている気がする」
「上司のようなキャリアを歩みたくない」
「他の会社ならもっと評価されるのでは」
この葛藤は、3年目なら誰もが一度は通るもの。
大切なのは、“衝動で動く”のではなく、“整理して決める”ことです。
データで見る「3年目転職の実態」
dodaの転職動向調査(2024)によると、
社会人3〜5年目の転職成功率は全体平均の1.5倍。
企業側も「基礎スキルがある若手」を積極的に採用しています。
(出典:doda 転職成功者データ2024)
一方、転職後1年以内に再び転職を考える人も**27.3%**と高い割合を占めています。
理由の多くは、
- 仕事内容のギャップ
- 年収・待遇の期待外れ
- 人間関係や文化のミスマッチ
──つまり、「自分が何を求めているか」を整理せずに転職すると、
“3年目の後悔”が“4年目の転職地獄”に変わってしまうのです。
人事が見てきた「成功する3年目転職」と「後悔する3年目転職」の違い
3業界で人事部長として面接・採用に関わってきた中で、
転職がうまくいく人と失敗する人には、明確な傾向がありました。
| 成功する人 | 後悔する人 |
|---|---|
| 自分の経験とスキルを言語化している | 「何となく転職したい」で動く |
| 退職理由を“成長軸”で説明できる | 不満を中心に語る |
| 転職先の文化や働き方を事前に調べる | 「条件」だけで選ぶ |
| 自己分析に時間をかけている | スカウトメールに反応して即応募 |
元人事の実感
転職で評価されるのは“経験の長さ”ではなく“経験の整理力”です。
それを可視化するのが、キャリア棚卸しです。
キャリア棚卸しとは?──自分の「仕事資産」を見える化する作業
「キャリア棚卸し」とは、
これまでの仕事で得たスキル・経験・成果・価値観を整理し、
“自分の市場価値”を可視化する作業のこと。
棚卸しをする3つの目的
- 自分の強み・得意分野を明確にする
- 転職理由や志望動機を言語化できるようにする
- 今の職場に残る選択肢も冷静に見られるようにする
特に3年目の棚卸しは、単なる職務経歴の整理ではなく、
“これからの方向性”を見極めるためのキャリア診断です。
【実例】3年目で転職を考えたけど踏みとどまったWEBエンジニアの話
Mさん(当時25歳・男性)は、WEB制作会社に新卒入社。
3年目の春、「周りが転職しているから」という理由で転職を検討していました。
しかし、私との面談で“キャリア棚卸しシート”を一緒に作ることに。
自分の仕事を細かく書き出すうちに、気づいたことがありました。
「自分、まだ“設計スキル”は浅い。
でも、クライアント調整力は誰よりあるかも。」
その後、社内でディレクター職へ異動。
結果的に転職せずに年収が80万円アップし、現在も活躍中です。
教訓
“辞める前に棚卸しをする人”は、転職しても残っても後悔しません。
逆に、“考えずに動く人”はどこへ行っても迷い続けます。
キャリア棚卸しの実践ステップ【完全版】
STEP1:仕事の棚卸し──「自分が何をしてきたか」を整理
まずは、3年間で関わった業務をすべて書き出します
▷書き出すポイント
- 担当業務・プロジェクト内容
- 役割・関わった人数
- 使用したスキルやツール
- 成果(数値・改善・貢献など)
例:
WEBサイトの改善提案を担当。CVRを15%改善。
新人教育を担当し、3か月で独り立ち率を80%に引き上げた。
元人事のアドバイス
「当たり前にやってきたこと」が、一番の武器です。
“誰でもできること”を“再現性のある成果”として語れるようにしましょう。
STEP2:スキルの棚卸し──「自分の得意・苦手」を可視化
▷書き出し例
| スキル | 自信度(5段階) | 活用した場面 | 今後の伸ばし方 |
|---|---|---|---|
| コミュニケーション力 | ★★★★★ | クライアント調整 | ファシリテーション研修を受ける |
| 企画・提案力 | ★★★★☆ | 社内改善提案 | プレゼンの質を高める |
| 数値分析力 | ★★☆☆☆ | アクセス解析 | Excel講座で基礎強化 |
💬 ポイント
“今できること”と“伸ばしたいこと”を分けて書くと、
「次のキャリアで活かす・補う」両面が見えてきます。
STEP3:価値観の棚卸し──「自分が大事にしたい働き方」を整理
キャリアで迷う人の多くは、“価値観の優先順位”が曖昧です。
▷価値観ワーク
以下の中から「自分が働く上で大事にしたい項目」を3つ選んでみましょう。
- 安定
- 挑戦
- 収入
- チームワーク
- 貢献
- 専門性
- ワークライフバランス
- 創造性
元人事の一言
どんなに条件が良くても、価値観が合わない職場では長続きしません。
“何を優先したいか”を決めることが、転職判断の軸になります。
STEP4:将来ビジョン──「3年後どうなっていたいか」を描く
棚卸しを終えたら、今度は未来を描きます。
▷キャリアマップ例
| 年次 | 目標 | 行動 |
|---|---|---|
| 今 | 自分の強みを明確化 | キャリア棚卸しを完了させる |
| 1年後 | 専門スキルを1つ深める | 資格・研修・外部案件に挑戦 |
| 3年後 | マネジメント or 独立を視野に | チーム運営・副業で経験を積む |
3業界で見た「棚卸しがうまい人」の共通点
| 業界 | 成功パターン |
|---|---|
| WEB業界 | ポートフォリオ化して“見せる棚卸し”をしている |
| 児童福祉業界 | 事例・成果を“エピソードで伝える”力がある |
| 建設業界 | 図面・実績・資格を“数字で整理”している |
共通するコツ
どの業界でも、“経験を見せる力”が次のチャンスを生みます。
単なる経歴ではなく、“学びの物語”として整理しましょう。
棚卸しをした結果、転職せずに“成長”を選ぶ人もいる
実は、キャリア棚卸しをした結果、
「今の職場でもう少し頑張る」という選択をする人も少なくありません。
建設業界で働くEさん(27歳)は、棚卸しを通じて
「技術力はまだ磨ける」「社内で資格支援制度がある」と気づき、
転職を1年延期して資格を取得。翌年、社内昇進+年収60万円アップを実現しました。
元人事の助言
“辞める決断”より、“残る理由”を言語化できる人は強い。
転職も現職継続も、キャリア棚卸しをして初めて“選択”になります。
棚卸しを終えたらやるべき3つの転職準備ステップ
① 市場価値チェック
dodaやミイダスなどの「市場価値診断」を活用し、
自分のスキルがどの職種・業界で評価されるかを確認。
② 情報収集
求人を見るだけでなく、企業の働き方や文化をSNS・口コミでリサーチ。
特に「社員インタビュー」や「会社ブログ」は、価値観の相性を知る材料になります。
③ キャリアアドバイザー相談
第三者視点で自分の棚卸し内容をチェックしてもらうと、
“市場での立ち位置”を客観的に知ることができます。
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
自己分析・市場分析・求人戦略を一気通貫で支援。
“転職してよかった”と思える道を一緒に設計します。
明日からできる3つの「キャリア棚卸し行動」
1. 業務メモを「できたこと日記」にする
→ 日々の仕事を“成果”として記録。1週間で振り返るだけでも違います。
2. 同期や先輩と“棚卸し対話”をしてみる
→ 他人の視点を入れることで、自分の強みに気づけます。
3. 休日に「3年間の仕事年表」を作る
→ 転職前に“自分史”を整理することで、面接にも活きます。
まとめ|転職は「勢い」ではなく「設計」
3年目の転職は、キャリアを大きく変えるチャンスです。
ただし、棚卸しをせずに動く人ほど、また迷い始めます。
「転職したい」と思った瞬間こそ、“立ち止まる勇気”を持ちましょう。
キャリアの主導権は、会社でも環境でもなく、自分にあります。
転職はゴールではなく、“次の設計フェーズ”。
あなたの経験と価値観を整理すれば、
“どこで働くか”よりも、“どう働くか”が見えてきます。
💬最後に
キャリアは積み上げるものではなく、“選び直せる”もの。
3年目こそ、自分を再定義するタイミングです。
まずは1枚のキャリア棚卸しシートから始めてみましょう。


コメント