【元人事部長が解説】社会人1年目でやるべきキャリア設計の基本

キャリア設計

「とりあえず頑張る」から抜け出せない1年目たちへ

入社して数か月。
目の前の業務をこなすだけで精一杯──そんな“社会人1年目の壁”に直面していませんか?

・「上司の指示で動くだけで、自分で考えられていない気がする」
・「同期と比べて成長が遅い」
・「この仕事が自分に合っているのか分からない」

こうした悩みは、誰もが通る通過点です。
しかし、ここで立ち止まって“キャリア設計”を始めるかどうかが、
数年後のキャリア満足度を大きく左右します。

──私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界で人事部長を務め
数百名の新卒社員を採用・育成してきました。
現在は企業向け採用支援とキャリア設計アドバイスを行っていますが、
「1年目でキャリアを考える人」と「何も考えずに3年過ごす人」では、
5年後の成長スピードがまるで違うことを実感しています。

この記事では、社会人1年目がやるべきキャリア設計の基本を、
人事・現場・心理の3つの視点から分かりやすく解説します。


なぜ「社会人1年目」がキャリア設計の分岐点になるのか

1年目は“キャリアのOS”がインストールされる時期

社会人1年目は、仕事のスキルよりも“働く姿勢”が形成される時期です。
ここでの学びや癖が、今後10年以上のキャリアに影響します。

厚生労働省の「労働経済白書(2024)」によると、
社会人1〜3年目の“職場適応期”に得た経験が、5年後の定着率や昇進スピードに強く関連しているとのデータもあります。
(出典:厚生労働省『令和6年 労働経済白書』

つまり、「ただ頑張る」ではなく、
“何のために頑張るか”を意識できるかどうかが、その後のキャリアを左右するのです。


「1年目で考えなくていい」は、もう古い

かつては「3年働いてから考えろ」という時代でした。
しかし、今は転職やキャリアチェンジが当たり前。
キャリア設計=生き方設計の時代になっています。

リクルートワークス研究所の「キャリア形成意識調査2024」では、
20代社会人の68.4%が“キャリアに不安を感じている”と回答。
一方で、1年目から自己分析をしている人の満足度は約2倍に上がっています。

つまり、キャリア設計は“社会人1年目の必須スキル”なのです。


人事が見てきた「成長する1年目」と「伸び悩む1年目」の違い

私が3業界で人事をしてきた中で、成長スピードが速い人には共通点がありました。

成長する1年目伸び悩む1年目
目的意識を持って行動する目の前の仕事を“こなすだけ”
小さな成功体験を言語化するミスや反省で思考停止する
上司・先輩に質問を重ねる「怒られたくない」が優先
将来像を3年単位で描いている「今が大事」と考えて止まる

この差は才能ではなく、「考える習慣」の差です。
社会人1年目で“キャリア設計図”を描いているかどうか。
それが、成長曲線を分ける最大の要因になります。


【実話】児童福祉業界の新人が変わった「1枚のキャリア設計図」

私が児童福祉施設で人事をしていた頃、入職1年目の女性職員(Sさん)がいました。
子ども支援に情熱を持って入社したものの、現場の忙しさや人間関係に悩み、
半年後には「自信を失って辞めたい」と面談に来ました。

私は彼女に1枚の紙を渡し、こう言いました。

「今の仕事の“どこがしんどいか”“どこは好きか”を全部書き出してみよう。」

数日後、彼女は“キャリア設計図”を手に戻ってきました。
そこには「子どもと関わる時間をもっと持ちたい」「記録業務が苦手」「学びの時間が欲しい」と明確に書かれていました。

それを基に業務を再設計し、半年後にはリーダー候補に成長。
「自分の得意と苦手を見える化することが、キャリア設計の第一歩だった」と振り返っています。


社会人1年目がやるべきキャリア設計3ステップ


STEP1:自己理解──「得意・不得意・価値観」を明文化する

キャリア設計の基礎は自己理解
就活の延長ではなく、“働く自分”を理解するステップです。

▷ワーク①:自分の“強みの原石”を掘り出す

  • 仕事で褒められたことを3つ書く
  • 自分が「なぜそれを嬉しいと感じたか」を考える
    → 感情の根に“価値観”が隠れています

 元人事の視点
強みとは「他人が自然に助けを求めてくる領域」。
たとえ自分が“当たり前”と思っていても、それは社会では“価値”になります。


STEP2:成長戦略──「3年後にどうなりたいか」を描く

社会人1年目がやるべきは“具体的な3年後像”の設計です。
ここで言う「成長戦略」は、転職前提ではなく、自分の軸を育てる計画のこと。

▷ワーク②:キャリアマップを描いてみよう

期間目的行動例
1年目職場理解・基礎スキル業務の全体像を把握・PDCAを回す
2年目専門分野を磨く資格・スキル学習・社外セミナー参加
3年目成果を形にするプロジェクト主導・後輩育成・外部発信

3業界比較での学び

  • WEB業界:自分で学ぶ姿勢が評価につながる
  • 児童福祉業界:理念共感+実務スキルの両立が鍵
  • 建設業界:現場経験×資格で昇進スピードが変わる

“どの軸で自分を成長させたいか”を意識することが、戦略的キャリア設計です。


STEP3:環境設計──「成長できる土台」を整える

成長する人は、環境を“選ばずに活かす”人です。
配属ガチャや上司との相性に不満を持つ前に、
今の環境をどう使い倒せるかを考えるのがプロ意識。

▷チェックリスト:環境を活かす5つの行動

  1. 月1回、自分の学びを上司に報告
  2. 苦手業務の改善策を自分で提案
  3. 会社の仕組みを1つ改善してみる
  4. 外部セミナー・勉強会に1回参加
  5. 同期と「仕事の壁」を共有・分析

元人事の補足
人事は「報告・提案・挑戦」をした若手をよく覚えています。
それが次のチャンスや抜擢につながる“成長サイン”になります。


社会人1年目のキャリア設計図の作り方【テンプレ付き】

以下の3項目をA4用紙1枚にまとめるだけでOKです。

【キャリア設計図テンプレ】

  1. 大切にしたい価値観(例:信頼・挑戦・貢献)
  2. 今の仕事で伸ばしたいスキル(例:顧客対応力・提案力)
  3. 3年後の理想の姿(例:「チームを任される存在になる」)

コツ:抽象⇔具体を行き来する
「人の役に立ちたい」→「お客様からありがとうを直接もらえる営業になりたい」
このように抽象を具体に落とし込むことで、行動に結びつきます。


よくある失敗と対処法:キャリア設計“挫折”パターン

よくある壁対処のヒント
理想が高すぎて現実とのギャップに苦しむ「理想50%・現実50%」で設計し直す
目標を立てたのに続かない“期限つき小目標”を設定(例:3週間で報告資料1本改善)
上司と合わない“学べる部分”を1つだけ探す。苦手上司は最高の教材になる
他人と比べて落ち込む“昨日の自分”との比較に切り替える

3業界共通の傾向
どの職場でも、最初に“環境のせい”にする人ほど離職が早い。
一方で、“環境を使って学ぶ人”は自然に評価され、年収も早く上がります。


キャリア設計を続けるための「週1セルフレビュー習慣」

1年目のキャリア設計は“つくって終わり”ではなく、“更新し続ける”ことが大切です。

▷週1セルフレビューの質問例

  • 今週できたこと/できなかったことは?
  • それを通じて得た気づきは?
  • 来週、何を1つだけ変える?

これを繰り返すだけで、
「自分の成長を可視化できる社会人」になれます。

元人事の体感
1年目からこの習慣を持つ社員は、3年目で“任され方”が違います。
成長を見せられる人ほど、評価もチャンスも自然と増えるのです。


キャリア設計で見えてくる“自分らしい成長戦略”

社会人1年目の目的は、「完璧になる」ことではなく、
「自分の軸を育てること」です。

  • WEB業界であれば、スピードに慣れながらも“得意領域”を掴む。
  • 児童福祉業界なら、人との関わり方を磨き“信頼される基礎”を築く。
  • 建設業界では、基礎体力とチームワークを身につけ、信頼を積み上げる。

それぞれに“成長の土壌”があります。
大事なのは、どんな環境でも「自分の成長の筋道」を意識して働くことです。


明日からできる3つのキャリア行動

① 「なりたい先輩」を3人見つける

ロールモデルを探すことで、“なりたい方向”が具体化します。

② 「今日の学び」を1行でメモ

1行日記で“成長を記録する癖”をつけましょう。

③ 「3年後の自分に手紙を書く」

未来の自分へメッセージを書くことで、“行動の目的”が見えてきます。

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まとめ|キャリア設計は“才能”ではなく“習慣”

社会人1年目でキャリアを考えることは、決して早すぎません。
むしろ、“早く考えた人ほど後悔しない”のです。

転職市場でも、自分の軸を語れる若手は年々評価が上がっています。
(出典:doda 平均年収ランキング2024

転職は「勢い」ではなく「設計」。
そして、設計には“自分を理解する時間”が必要。

小さくてもいい、まずは1枚のキャリア設計図を書いてみましょう。
行動すれば、必ず未来は変わります。


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