その志望動機、採用担当には「リスクシグナル」に見えている
「理念に共感しました」「成長できる環境だと思いました」——一見、前向きな言葉。でも書類は通らず、面接も伸びない。なぜか?
私はWEB・児童福祉・建設の3業界で人事部長を務め、現在は現役の企業向け採用支援サービス提供者として、累計1,000名超の選考に立ち会ってきました。現場の結論は明快です。刺さらない志望動機には“型”がある。その型を外し、“企業が見ているポイント”に合わせて書き換えれば、通過率は上がります。
本記事では、失敗例→なぜNGか→OKの修正法を、人事の読み筋・最新データ・3業界の実例とともに解説します。面接現場でも、「志望動機が明確でない」が失敗の最上位という調査もあります。Amazon Web Services, Inc.
なぜ“良いこと”を書いているのに落ちるのか?
- 質問:「理念共感・成長・安定」など“正しそうな言葉”を並べても、なぜ評価されない?
- 事実:人手不足テーマが続く一方、企業は“合う人”を厳密に見極めています。志望動機は“適合性”と“再現性”の確認工程。厚生労働省+1
- 示唆:企業研究の浅さや“自分の強み→事業への貢献”の橋渡し不足が、落選の主因になりやすい。マイナビ・doda等もNG例や具体化の重要性を繰り返し指摘しています。マイナビ転職+2マイナビ転職+2
心理・経済・労務の3視点
心理:採用側は“短時間でリスク回避”をする
面接の失敗要因トップは「志望動機が明確でない」。面接官は数分で“この人はなぜ当社か/何で貢献できるか”を探します。曖昧な志望は配置・定着のリスクに直結。Amazon Web Services, Inc.
経済:採用競争は続く=比較軸は“事業貢献の再現性”
人手不足と賃上げ環境の中でも、必要人数の充足はなお厳しい。だからこそミスマッチを避ける選考の精緻化が進み、“具体的な貢献像を示す志望動機”が通ります。厚生労働省+1
労務:志望動機は“配置の根拠”として扱われる
志望理由は配属・育成・評価運用の起点。理念コピーや場所理由は運用上の根拠にならないため、業務・事業・顧客への接続が必須。大手求人各社もNG例からOK例への言い換えを推奨しています。マイナビ転職+1
3業界の“やりがちNG→OK”を現場書き換え
ケース1(WEB/マーケ職)
NG:「御社の成長性に惹かれました」
なぜNG? 何に、どう貢献できるのかが空白。
OK:「リード獲得の効率化に関心があります。前職でCVR1.8→2.4%/CPL15%改善。SEO×LP改善×MA運用でLTV基準の配分に再設計しました。御社○○事業の新規獲得単価の平準化に、ABテスト設計と有料×自然の連携で貢献します。」
ケース2(児童福祉/管理者候補)
NG:「地域貢献に共感」
OK:「加算算定率の安定運用で運営基盤に貢献します。前職、算定率95%/監査指摘0を2年維持。ヒヤリハット→動線改善で事故3→1件。御社の新拠点立ち上げでは職員研修と保護者連携の設計から関与したい。」
ケース3(建設/現場代理人)
NG:「大規模案件に携わりたい」
OK:「工程・原価・安全の三本柱で貢献します。出来高1.2億/工期8か月、工程-7日/外注比率-10%/労災0。VE提案で資材▲4%(年▲480万円)。御社の公共○○工事で、工程短縮×品質維持の再現経験を活かします。」
人事の裏側:会議では“要件適合→再現性→加点要素”の順で議論。志望動機がこの順に短く整っている人ほど推薦されます。
志望動機の“やりがち失敗”10選と即修正テンプレ
1. 理念に“ただ”共感(抽象)
- NG:「理念に共感しました」
- OK:「理念の“○○”に共感し、(自分の経験)で(事業KPI/運営指標)に貢献します」
根拠:求人各社も“どこに・なぜ”の具体化を明示。マイナビ転職
2. “場所ありき”(距離・地元)
- NG:「家から近いから」「地元で働きたい」
- OK:「地域特性×事業の観点で(自分の経験)を活かしたい。○○地域の需要に対し○○施策で貢献」
注意:場所は選考理由になりにくい。事業・顧客に接続する。マイナビ転職
3. “成長したい”の空書き
- NG:「成長できる環境で」
- OK:「(不足スキル)を(具体案件・プロセス)で伸ばし、(期限)に(貢献指標)を担う」
ポイント:学習計画×提供価値の両輪で。
4. 転職理由=志望理由のすり替え
- NG:「前職が合わなかったので」
- OK:「(自分の強み)が御社の○○戦略に適合し、(このポジション)で(KPI/運営指標)を担える」
原則:“どこで活きるか”へ転換。
5. 実績が“裸の数字”
- NG:「売上2,000万円」「PV80万」
- OK:「6か月で自然流入+30%/CVR1.8→2.4%。仮説A/B/Cで指名検索+12%」
理由:期間・母集団・手段を添えて再現性を示す。
6. 社内称号・独自肩書の羅列
- NG:「プロフェッショナル1級(社内)」「エバンジェリスト」
- OK:「要件定義〜移行の一連を担当/年間4案件のPMで総額1.2億円を管理」
比較可能性を高める。
7. 応募先の言葉に“翻訳”していない
- NG:「集客」「職員指導」
- OK:「リード獲得/オンボーディング/人材育成(求人語彙)に置換」
狙い:ATS/評価表と語彙一致。
8. 「御社の事業理解」が浅い
- NG:「業界No.1と知り…」
- OK:「○○事業のARR1.4倍/解約率△○pt(公開情報)。自分の再現経験=チャーン改善×オンボでCSMとして貢献」
事実→貢献像の順で。
9. 期限・コミットがない
- NG:「貢献したいです」
- OK:「90日プラン:観察→仮説→A/B→KPI初期値の閾値まで引上げ」
10. “熱意”だけでロジックがない
- NG:「熱意は誰にも負けません」
- OK:「初期90日で何を、どう変えるかを記述。役割×KPI×意思決定で語る」
調査でも「志望動機の明確化」が面接失敗の最上位。Amazon Web Services, Inc.
データ補足:いま、志望動機に“具体”が要る理由
- 労働経済白書(令和6年版)のテーマは人手不足への対応。採用は活発だが、選考の見極めはより精緻。=**志望動機での“貢献像の具体化”**が重要。厚生労働省
- 中途採用実態調査(リクルートワークス研究所)でも、人材確保の厳しさは継続。企業は適合人材を素早く確保したい。=「なぜ当社か×どう貢献か」を短く示す人が有利。リクルートワークス研究所+1
- 求人各社のガイドは、NG例→OK例への置換を一貫して推奨。=抽象→具体、自己都合→事業都合の変換が効く。doda+1
3ステップで“刺さる志望動機”
ステップ1|事実整理:Why me → Why you → Why now
- Why me(自分):強み・再現経験・使える武器(例:工程短縮/加算運用/CVR改善)。
- Why you(相手):事業/顧客/指標を1つに特定(例:新規獲得CPLの平準化)。
- Why now(今):相手の直近トピック(新規拠点、法改正、案件増)。
- 情報源は公式IR/ニュース/採用ページを5分で確認。
ステップ2|構文化:PASONA for Motivation
- P(Problem):相手の課題仮説
- A(Affinity):自分との親和(再現経験)
- S(Solution):何で解くか(武器)
- O(Outcome):成果イメージ(KPI/運営指標)
- NA(Next Action):入社後90日プラン
ステップ3|仕上げ:90秒・180字・3段落
- 結論(なぜ御社か)
- 根拠(再現経験×武器)
- 初期コミット(90日でここまで)
→ 面接でもそのまま口頭再現できる長さに。
具体テンプレ(業界別)
■ WEBマーケ/ディレクター向け
御社○○事業の新規獲得CPL平準化に貢献したく志望します。前職でCVR1.8→2.4%、自然流入+30%をSEO×LP改善×MAで実現。ABテスト設計と内部リンク再設計、有料×自然の配分を90日で整備し、MQL→SQL歩留まり+10ptを目標にします。
■ 児童福祉(管理者候補/放デイ)
加算算定率の安定運用と安全文化の定着で運営基盤に貢献します。算定率95%/監査指摘0を2年維持し、事故3→1件を実現。保護者連携×職員育成の仕組み化で定着率+10ptを目指し、新拠点立ち上げにも対応します。
■ 建設(現場代理人)
工程・原価・安全の三本柱で貢献します。出来高1.2億/工期8か月で工程-7日/外注比率-10%/労災0を達成。VEで資材-4%の再現経験を、公共○○工事の工程短縮×品質維持に活かし、初期90日でクリティカルパスの再設計を行います。
行動プラン・セルフワーク
明日からできる3つのアクション
- 求人票の“語彙”を抽出:必須/歓迎/KPIを10語ピック。
- 再現経験の棚卸し:各経験を**R(役割)-C(課題)-A(行動)-R(結果)**で4行に。
- 90日プランを1枚で:観察→仮説→A/B→初期KPIの閾値を明記。
チェックリスト(印刷推奨)
- 「御社のどの事業に、何で貢献するかを書いたか
- 抽象語(共感・成長・尽力)を行動動詞+数値に変換したか
- Why me/you/nowが1スクロールで読めるか
- 面接で90秒再現できる長さか
- 求人語彙に“翻訳”したか(ATS/評価表対応)
関連して、こちらの記事でも詳しく紹介しています → 書類選考に通らない原因と改善法
もう一歩踏み込みたい方はこちら → 採用担当が驚いた「やってはいけない書き方」
未来像・成果イメージ
- 書類通過率が上がる:面接回数が増え、比較から“選べる立場”へ。
- 面接の質が上がる:志望動機=議論の設計図となり、再現性と配置の話に集中できる。
- 条件交渉の根拠が増える:成果×貢献像が明確な人は給与テーブル上側での提示が期待しやすい。
求人各社のガイドラインや労働経済白書の示唆も、“具体で語る志望動機”がいま最適であることを裏づけています。doda+2マイナビ転職+2
まとめ
志望動機は“熱意の作文”ではなく“配置の根拠”。
- 質問:「なぜ当社のどの事業に、何で貢献できるのか?」
- ストーリー:自分の再現経験を、事業課題と橋渡しする物語に。
- 分析:抽象・自己都合・裸数字・翻訳不足がNG。
- 実践:Why me/you/now × 90日プランで仕上げる。
結論——転職は『勢い』ではなく『設計』。そして設計には“自分を理解する時間”が必要。行動すれば、状況は必ず変えられます。
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参考・出典(本文で引用)
- 厚生労働省『令和6年版 労働経済の分析』:人手不足への対応と選考の精緻化の文脈。厚生労働省+1
- リクルートワークス研究所『中途採用実態調査(2025見通し)』:人材確保の厳しさ継続。リクルートワークス研究所+1
- マイナビ転職「NGな志望動機・志望理由」:NGの具体例。マイナビ転職
- doda「志望動機の書き方」:例文と書き方の基本。doda+1
- エン・ジャパン(調査):「志望動機が明確でない」が失敗要因の最上位。Amazon Web Services, Inc.


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