その一文、採用側には“危険信号”に見えています
「丁寧に書いたのに、なぜか通らない」「実績はあるのに、書類で落ちる」。——多くの方がぶつかる壁です。WEB・児童福祉・建設の3業界で人事部長を務め、現在は現役で企業向け採用支援サービスを提供している立場から断言します。落ちる書類には“やってはいけない書き方の型”がある。
この記事では、採用担当が実際に驚いたNG表現を、なぜダメなのか(採用側の読み方)→どう直すか(言い換えテンプレ)まで具体例で分解します。さらに、公的・求人各社の最新データも交えて「いま、書類で何が見られているか」を明晰化します(書類通過率目安や評価基準の公開データを適宜引用)。マイナビ転職+2エン株式会社+2
採用担当は“数分で”リスクを見抜こうとする
- 書類選考は面接前のふるい。企業は要件適合とリスク低減の観点で、短時間で可否を判定します。エン株式会社
- 転職サービスの公開データでも、書類通過はおおむね30〜50%のレンジが目安。つまり“通る前提”ではない世界です。マイナビ転職
- マクロ環境は雇用改善・賃上げが続く一方、求める人材像への適合性はより厳密に評価されます。最新の『労働経済の分析』でも、労働力需給の引き締まりと選考の精緻化が示唆されています。厚生労働省+1
市場動向と“書類の重要度”はリンクする
- dodaの最新レポートでは平均年収の上昇が続き、年代別平均も右肩上がり。年収が動く局面ほど、書類での差別化が交渉余地に直結します。doda+1
- 企業側は統一基準で書類を評価し、ばらつきを抑える運用へ。形式・表現の乱れ=比較不能リスクとして嫌われます。エン株式会社
「やってはいけない書き方」は“誤読”を生む
採用担当の読みは「要件適合 → 再現性 → 加点要素」。ここで誤読を生む表現は即減点です。以下、現場で実際に“驚いた”NGと、どう直せば一発で伝わるかを例解します。
(※各例は匿名加工。3業界での実地経験に基づく共通パターンです)
NG表現 → OK言い換え(直し方テンプレ付き)
NG1:主語がない“受け身文章”
NG:「プロジェクトの推進に携わりました。改善に尽力しました。」
なぜダメ? 誰が何を決め、どれだけ動かし、どう結果が出たか不明。再現性の判断ができない。
OK:「自分の役割:進行遅延プロジェクトの工程再設計を主導。範囲:発注〜検収、4社連携。結果:工期7日短縮/外注比率-10%。」
テンプレ:
- 役割(私は何を引き受けた?)
- 課題(何が問題だった?)
- 行動(どう意思決定し、何をやった?)
- 指標(%/日数/件数/万円で)
- 制約(人員・予算・期限・法令)
NG2:数字が“裸”で文脈ゼロ
NG:「PV80万達成」「売上2,000万円」
なぜダメ? 難易度・期間・母集団がない数字は、盛っているのか、偶然かが判別不能。
OK:「6か月で自然流入+30%(内部リンク再設計/検索意図階層化/構造化データ)、CVR1.8→2.4%。」
NG3:社内固有の肩書インフレ
NG:「エバンジェリスト/プロフェッショナル1級(社内基準)」
なぜダメ? 市場比較ができない。実質(担当範囲・責任)で語るべき。
OK:「要件定義〜移行までの一連を担当/年間4案件のPMとして総額1.2億円を管理。」
(企業は肩書より実務の実質を見ます。評価は統一基準で行われるため、比較可能な表現に。エン株式会社)
NG4:抽象語の連打(貢献・尽力・携わる)
NG:「課題解決に尽力」「コミュニケーションを大切に」
OK:「週1の障害レビューで要因を人・物・方法に分解、仕掛品滞留30%削減。」
NG5:網羅しすぎて“要件”が埋もれる
NG:「全職歴を均等に15ページ」
OK:1ページ目に“応募先の要件に直結”する3実績だけを定量×プロセスで強調。その他は折り畳み・概要に。
NG6:志望動機が会社名差し替えレベル
NG:「貴社の理念に共感」
OK:「●●事業の直近2年でARRが約1.4倍、解約率△●pt。私はオンボーディングの仕組み化でチャーン改善の再現経験があり、CSM×プロダクト連携でリテンションKPIを担う強みを提供できます。」
NG7:法律・安全・倫理の視点が抜ける(福祉・建設)
NG:「保護者対応」「現場管理」
OK:「監査指摘0件を2年維持、加算算定率95%、事故件数を月3→1へ。ヒヤリハット分析と導線改善を実施。」
OK(建設):「出来高1.2億/工期8か月、労災0、工程短縮7日、VEで資材コスト▲4%。」
NG8:成果だけで“なぜできたか”がない
NG:「売上達成率120%」
OK:「既存ABMセグメント再定義→有望業界×決裁階層の案件密度を1.7倍、架電→MQLの歩留まり+12pt。勝ち筋=“だれに・なにを・どう提案するか”を製販連携で標準化。」
NG9:体裁崩れ(誤字・フォント・日付ズレ)
NG:「全角半角まぜ/日付未統一/箇条書きばらつき」
OK:フォーマット固定(見出し・本文・実績欄の階層を統一)。
理由:企業は客観的・統一基準で比較するため、体裁崩れは比較不能=リスクとみなされます。エン株式会社
NG10:“熱量”だけで論理がない
NG:「熱意は誰にも負けません!」
OK:「入社後90日プラン(観察→仮説→検証)を明記。30・60・90日目のアウトカム指標を提示。」
自己PRの書き方事例
事例1:WEBディレクター(30代)
Before:「SEOに携わり、PVを伸ばしました。」
After:「役割:新規記事のKW設計〜公開後改善を主導、編集3名をリード。KPI:自然流入+30%/6か月、CVR1.8→2.4%。制約:月30万円予算、外注ゼロ。学び:内部リンク網の再設計で指名検索+12%。」
→ 主語・範囲・制約を置くと、再現性が採用側に伝わる。
事例2:児童福祉(管理者)
Before:「保護者対応に注力」
After:「監査指摘0件×2年、加算算定率95%、職員定着率+12pt。事故件数3→1(ヒヤリハット起点で導線を改修)。」
→ 法令・安全・運営の3点を数値化。
事例3:建設(現場代理人)
Before:「現場全体を管理」
After:「出来高1.2億/工期8か月/公共。工程-7日、外注比率-10%、労災0、VEで資材-4%(年▲480万円)。」
→ 工程・原価・安全の三本柱で一発理解。
採用の現場感覚:書類比較は1人あたり5〜10分。“要件に効く実績3つ”を先頭に置いた人が、会議で推薦されやすい。書類通過は30〜50%レンジ。通る設計が武器になります。マイナビ転職
⑥ 実践ステップ:今日から直せる“設計手順”
ステップ1:一次情報の棚卸し(45分)
- 案件ごとにR(役割)-C(課題)-A(行動)-R(結果)-Constraint(制約)を4〜5行で記録。
- 指標は統一単位(%/日数/件数/万円)。
- 成果だけでなく意思決定の根拠(仮説→検証)を一言で。
ステップ2:求人要件の“語彙”化(30分)
- 応募3社の「必須/歓迎/成果責任/関係者」から共通語彙を抽出し、サマリ冒頭に配置。
- 企業は統一基準で見る=語彙を合わせるほど比較されやすい。エン株式会社
ステップ3:1ページ目の設計(30分)
- ヘッダー:肩書(実務範囲)/専門領域/得意KPI
- サマリ:役割・規模・武器3つ(例:工程短縮/原価管理/多職種連携)
- ハイライト:定量3行(面積を使って視線誘導)
ステップ4:体裁の固定(15分)
- 見出し階層・箇条書き・日付・フォント・余白をテンプレ化。
- 誤字・日付ズレは“比較不能”の旗。提出前に逆読みで潰す。エン株式会社
関連して、こちらの記事でも詳しく紹介しています → 履歴書で落ちる人の共通NGパターン5選
もう一歩踏み込みたい方はこちら → 転職後の後悔を防ぐ“キャリアの棚卸し”とは
正しく“設計”すると何が起きるか
- 面接テーマが具体化:書類の仮説が面接で深掘りされ、再現性の議論に移行。
- 年収交渉の土台ができる:市場が上向く局面で、成果×仕組みを示せれば給与テーブル上位での提示が狙える。doda
- ミスマッチ減少:WEBはKPI達成プロセス、児童福祉は法令・安全、建設は工程・原価・安全——業界の価値観で語れるため、入社後の齟齬が減る。
行動プラン・セルフワーク
明日からできる“3つの直し”
- 主語の明確化:全文章で「私は〜した」を徹底。
- 裸の数字禁止:数字には期間・母集団・手段を必ず添える。
- 要件語彙の統一:求人票の言葉をそのままサマリへ。
5分でできる“NG自己診断”チェック
- 受け身や抽象語が残っていないか
- 社内称号のまま書いていないか
- 1ページ目の3実績が要件直結になっているか
- 指標の単位が混在していないか
- 誤字・表記ブレ・日付ズレがないか
テンプレ配布:R-C-A-R-C(制約)ひな型
【役割】_______________________
【課題】_______________________
【行動】_______________________
【結果】_______________________(%/日/件/万円)
【制約】_______________________(人員/予算/期限/法令 等)
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