頑張って書いたのに通らない——「何が悪いの?」の正体
「20社に応募しても1社も通らない」「スキルも経験もあるのに、なぜ書類で落とされるのか」
これは転職相談の現場で最も多く聞く悩みです。私はWEB・児童福祉・建設の3業界で人事部長を務め、現在は企業向け採用支援サービスを提供していますが、どの業界でも“落ちる人”には明確な共通点があります。
本記事では、書類通過率を上げるための実践的改善法を、人事目線・データ・現場エピソードを交えて解説します。
「一度書いた履歴書・職務経歴書を“構造的に”見直す」だけで、通過率が2倍近く改善するケースもあります。
努力しても報われない“書類落ちループ”
「丁寧に書いたのに」「履歴書を何回も直したのに」「内容には自信がある」——そう感じる人ほど、実は“見せ方”の構造ミスで損をしています。
採用現場では、1つの求人に平均50〜100通の応募が届くこともあり、書類選考に使える時間は1人あたり数分。
人事は、「どんな仕事を、どんな環境で、どう成果を出したのか」を瞬時に判断し、“再現性”と“安定性”を見ています。
つまり、内容が悪いのではなく、“伝わる設計”になっていないだけなのです。
実際に“通らなかった”3つのケース
ケース①:数字があるのに文脈がない(WEB業界)
Before:「PVを50万→80万に増やした」
After :「役割:SEO施策全体を担当/チーム3名。6か月で自然流入+30%(PV50万→80万)。
課題:既存記事のKW重複と内部リンク不足を是正、CTR+1.4ptを達成。」
数字は“結果”でなく“証拠”。
採用担当は「どんな課題をどう解いたか」を知りたいのです。
ケース②:抽象語だらけで“何をやった人か分からない”(児童福祉)
Before:「保護者対応や職員指導に尽力」
After :「放課後等デイサービス管理者として、加算算定率95%/監査指摘0件/定着率88%を2年維持。
事故件数3→1件へ改善(ヒヤリハット分析と導線改修による)。」
“尽力”や“携わる”はゼロ評価。数字・指標・制度に置き換えることで初めて伝わります。
ケース③:肩書が立派でも再現性が見えない(建設業)
Before:「現場代理人として複数現場を管理」
After :「出来高1.2億円/工期8か月/公共工事を統括。
**工程短縮7日・労災0・外注比率−10%・VE提案で資材コスト▲480万円(−4%)**を実現。」
肩書ではなく、業務の“実質”を伝えると、職種を超えて評価されます。
通らない理由は“内容”より“構成”
厚生労働省『令和6年版 労働経済の分析』によると、
企業が中途採用で重視する要素は「即戦力性」「コミュニケーション」「安定就労」(厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38638.html)。
つまり、書類選考は「過去の実績=即戦力の根拠」を示す工程。
書き方を間違えると、“できる人”でも見えなくなってしまいます。
また、転職サービスdodaの調査では書類通過率の平均は約30〜50%。
つまり半分の人は書類で落ちているのです。(出典:https://doda.jp/)
3業界の採用を見てきて感じるのは、通らない人ほど——
- 事実をただ時系列に並べている
- 自分の「強み」と「業務の成果」がつながっていない
- “再現性”の説明がない
この3点に尽きます。
書類通過率を上げるための3ステップ改善法
ステップ1:構造の見直し──「何を、どの順で見せるか」を再設計
書類の“順番”を間違える人が非常に多いです。
採用担当は1ページ目しか本気で読まない。だからこそ——
・1ページ目に「要件直結」の実績3つを置く
・サマリーで得意領域と再現性を明記する
・職務経歴の構成を「R-C-A-R」(役割→課題→行動→結果)で統一する
構造テンプレート例:
- 【役割】〇〇として□□を担当(規模・人数・期間)
- 【課題】当時の課題や制約(納期・人手・コスト)
- 【行動】具体的に何をどう変えたか(施策・工夫)
- 【結果】成果(数値・改善率・顧客・再現性)
ステップ2:内容の見直し──抽象語→行動動詞+数値へ
“頑張りました”ではなく、“どう頑張ったか”を動詞で表現します。
| NG表現 | 改善例 |
|---|---|
| 尽力しました | 「課題を抽出し、週次改善会議を設計」 |
| 携わりました | 「企画構築フェーズで要件定義を担当」 |
| 貢献しました | 「リード獲得単価を15%削減し、目標比120%達成」 |
| まとめました | 「新マニュアルを構築し、教育時間を半減」 |
文章は“主語+動詞+数値”の3点セットが鉄則。
採用担当の脳内で“再現性”が立体的に見えます。
ステップ3:求人要件の照合──“企業語”で書き換える
同じスキルでも、企業によって呼び方が違うため、“翻訳”が必要です。
たとえば——
| あなたの表現 | 企業が求人で使う語彙 |
|---|---|
| 集客 | マーケティング/リード獲得 |
| 利用者対応 | 顧客折衝/カスタマーサポート |
| 残業削減 | 生産性向上/業務効率化 |
| 職員指導 | チームマネジメント/人材育成 |
求人票の「必須」「歓迎」に出てくる単語を書類内に自然に埋め込むことで、
企業側のATS(採用システム)にも引っかかりやすくなります。
業界別“通る書類”の傾向
▶ WEB業界
- KPI・改善率・CVRなど、数字軸の成果が重視される。
- ただし“数字だけ”だと薄い。仮説・検証プロセスを添えると◎。
▶ 児童福祉業界
- 法令遵守・安全・職員育成の観点が最重要。
- 「加算算定率」「監査結果」「定着率」「事故件数」などが定量評価になります。
▶ 建設業界
- 工程・原価・安全の三点セットが軸。
- 「工程短縮日数」「原価削減率」「労災0」「出来高○億円」が刺さる。
書類通過率が上がると、転職の“質”が変わる
- 面接に呼ばれる回数が増える → 「比較される」立場から「選べる」立場へ。
- 自己分析が深まり、話がぶれない → 面接回答に一貫性が生まれる。
- 年収交渉がしやすくなる → “実績”を根拠にした交渉ができる。
dodaの平均年収データ(2024年版)によると、転職者の平均年収は426万円。
「書類の質」は年収帯を動かすレバーになっているのです。
(出典:https://doda.jp/promo/salary/)
行動プラン・セルフワーク
明日からできる「書類通過率アップ3ステップ」
- サマリーを刷新する:要件直結の実績3つを冒頭に。
- 抽象語を消す:「尽力・携わる・貢献」は全削除。
- 求人票を横に置く:語彙を統一して“相手の言葉”で書く。
履歴書見直しチェックリスト(印刷OK)
- 1ページ目に応募先に直結する成果がある
- 職務要約が3行以内で“再現性”が伝わる
- 数字・期間・規模がすべて入っている
- 抽象語・社内称号を外部表現に直した
- 求人票の言葉と書類内の語彙が一致している
- フォント・余白・日付に統一感がある
- 志望動機が“理念コピー”ではない
5分でできる「自己PR再設計ワーク」
- 紙に3つの実績を書く。
- それぞれに「何を変えたか」「どう考えたか」「数値」を添える。
- 最後に「どんな環境でも再現できる強み」を一言で書く。
→ これがあなたの“職務経歴書の核”になります。
キャリアアドバイザーの転職相談サービスでは、自己分析・市場分析・求人戦略を一気通貫で支援。
“転職してよかった”と思える道を一緒に設計します。
まとめ:通らないのは“能力不足”ではなく“設計不足”
書類選考は、“中身の良し悪し”ではなく“伝わり方の設計力”の勝負です。
主語を明確に、成果を数値化し、企業語に翻訳するだけで通過率は劇的に変わります。
最後にもう一度。
転職は『勢い』ではなく『設計』。そして設計には“自分を理解する時間”が必要です。
一歩踏み出すだけで、キャリアは確実に動き出します。


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