「未経験の職種に挑戦したい。でもアピールできる経験がない」
──転職相談で、最も多く聞く言葉です。
確かに、経験者と比べると即戦力にはなりにくい。
しかし人事の立場から見ると、「経験の有無」よりも「伸びしろと姿勢」を重視しています。
私は、WEB業界・児童福祉業界・建設業界の元人事部長として、
これまで1万人以上の応募書類・面接を見てきました。
未経験職種への応募者も多数採用してきましたが、
“採る人・落とす人”の差は明確でした。
採る人は「過去の経験を、未来の職種にどう転用するか」を言語化できている。
落ちる人は「やる気」しか書かれていない。
本記事では、人事が「この人は伸びる」と判断する、
未経験職種向けの自己PRの構成と書き方を、実例つきで徹底解説します。
「やる気だけじゃ伝わらない」──未経験応募の現実
未経験職種に挑戦する際、多くの人が「熱意」を前面に出します。
「新しいことに挑戦したい」
「興味があり、勉強しています」
しかし人事の立場から言えば、“やる気”だけでは判断できない。
企業が知りたいのは、「この人が実際にどう成長していくか」「どんな行動をとれる人か」です。
つまり──
自己PRでは「未経験でも成果を出す再現性」を見せる必要があります。
「意欲だけPR」して落ちたBさんの例
30代・販売職からWEB業界を目指したBさん。
職務経歴書にはこう書かれていました。
「これまで接客を通して人と関わる仕事をしてきました。
今後はWEBの仕事に挑戦し、スキルを身につけたいです。」
──悪くはない。でも“採用したい”とは思えない。
なぜなら、人事が知りたいのは「その経験がどう活きるのか」。
「なぜWEB業界に転換したいのか」まで繋がっていないからです。
Bさんと一緒に自己PRを作り直した結果はこうなりました。
「販売職として3年間、月間1,000人以上のお客様対応を担当。
その中で“言葉とデザインの影響力”に興味を持ち、店舗POPやSNS投稿の企画も行いました。
この経験から、WEBでも“伝わる仕組みづくり”に携わりたいと考えています。」
結果、書類通過率が10社中8社にアップ。
同じ経歴でも、「過去→興味→未来」が繋がれば“未経験”が武器になります。
未経験職種で評価されるのは「変換力」
人事は、未経験者に「経験」を求めていません。
求めているのは、「これまでの経験をどう応用できるか」。
たとえば──
| 現職(経験) | 応募先(未経験職種) | 転用できる強み |
|---|---|---|
| 販売職 | WEBマーケター | 顧客心理の理解・提案力 |
| 事務職 | 人事・採用 | 正確性・調整力・サポート意識 |
| 保育士 | 営業職 | 共感力・信頼構築力 |
| 建設作業員 | 現場管理・施工管理 | 現場理解・安全意識・計画性 |
つまり、“異業種の経験を翻訳する”のが、未経験PRの本質です。
人事が評価する「未経験自己PR」の構成テンプレート
未経験でも伝わる自己PRには、次の4ステップ構成があります。
| ステップ | 内容 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| ① 過去 | どんな経験をしてきたか | 自分の業務・実績を簡潔に紹介 |
| ② 転換理由 | なぜこの業界・職種に興味を持ったか | 経験との接点・学びを具体的に |
| ③ 強み | どんなスキル・姿勢を転用できるか | 行動・数字・再現性を意識 |
| ④ 未来 | どう貢献したいか | 新しい職種でどう活かすかを明言 |
例文テンプレート
私はこれまで〇〇職として△△の業務に携わり、□□という成果を上げてきました。
その中で、〇〇(新しい職種)に共通する要素に興味を持ち、スキルを磨き始めました。
前職で培った〇〇力を活かし、貴社でも□□の分野で貢献したいと考えています。
ポイント:
“転職理由”をポジティブに、「これまでの経験の延長線上」として描く。
⑤ 実例で学ぶ:未経験でも響いた自己PR例5選
例①:販売職 → WEBデザイナー
私の強みは、「相手に伝わるデザイン」を考える力です。
販売職として3年間、店舗POP・SNS投稿を自主的に企画し、
投稿閲覧数を平均200%向上させた経験があります。
お客様の“見たい・知りたい”を形にする視点を活かし、
貴社のWEBデザイン業務に貢献していきたいです。
人事コメント:
「数字と目的が明確。デザイン経験が浅くても“考え方の再現性”が伝わる。」
例②:事務職 → 人事・採用アシスタント
私の強みは、業務を正確かつ効率的に進める調整力です。
事務職として5年間、勤怠・契約・資料作成を担当し、
チーム内の業務ミスを年間20件→5件に削減しました。
この経験を活かし、人事・採用業務でもスピードと正確性の両立を意識して貢献したいと考えています。
人事コメント:
「“数字で改善した成果”があり、転職後の再現性を感じる。」
例③:保育士 → 営業職
私の強みは、相手の気持ちを汲み取り、信頼関係を築ける力です。
保育士として保護者対応を行い、信頼関係を深める中で相談件数を前年比150%に増やしました。
相手の課題を丁寧に聞き取り、最適な提案を行う営業職でも、この経験を活かしていきたいです。
人事コメント:
「“共感力”を数字で示せている。営業への転用意識が明確。」
例④:建設現場作業員 → 現場管理職
私の強みは、現場の課題を把握して改善に繋げる力です。
現場作業員として3年間、安全管理・清掃・整理を担当し、
職場環境改善案を提案したことで事故ゼロを1年間継続できました。
現場全体を管理する立場でも、安全と品質の両立に貢献していきたいです。
人事コメント:
「現場経験があることで管理職への説得力が増す。
“実績+意識”の両面で好印象。」
例⑤:接客業 → カスタマーサポート職
私の強みは、相手の状況を整理して課題を解決する力です。
接客業でクレーム対応を担当し、対応満足度アンケートで90%以上の高評価を3年連続で達成。
対話を通じて課題を明確にし、解決策を提案する力を、カスタマーサポート業務で活かしたいです。
人事コメント:
「“数字+行動”で具体的。未経験でも“顧客対応の質”が伝わる。」
未経験職種の自己PRを“響かせる”3つのポイント
| ポイント | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| ① 数字で語る | 件数・割合・期間などを明示 | 抽象的な“頑張り”より説得力がある |
| ② つながりを示す | 現職→応募職種の共通点を示す | 「なぜ転職するのか」が納得される |
| ③ 謙虚さを残す | 「学びながら成長したい」姿勢を加える | “伸びしろ”を好印象に変える |
特に「共通点」は採用担当が最初にチェックする部分。
“経験ゼロ”ではなく、“関連する強みがある”と伝えるだけで評価が変わります。
自己分析で「未経験職種に活かせる資産」を棚卸しする
| 現職で得たスキル | 転職先で活かせる要素 |
|---|---|
| 顧客対応 | ヒアリング・提案力 |
| データ整理 | 分析・レポート作成 |
| チームでの仕事 | 協調性・調整力 |
| スケジュール管理 | プロジェクト進行 |
| 教育・育成経験 | チームリーダーシップ |
💡転職は「ゼロからスタート」ではなく、「違うフィールドでの再活用」。
職務経歴書では「どのスキルをどんな形で使えるか」を明記しましょう。
行動プラン・セルフワーク
「5分でできる“未経験PR準備ワーク”」
・現職の仕事内容をすべて箇条書きにする
・「この経験が新しい仕事に活かせるとしたら?」と書き出す
・各項目に「成果」や「改善した数字」をつける
・一番数字が強いものをPRの中心にする
・「なぜこの職種を選んだのか」を3行で説明する
これをまとめるだけで、自然と“未経験でも説得力のある自己PR”になります。
未経験PRは“伸びしろの提案書”
未経験転職で人事が見ているのは「過去」ではなく「未来」。
経験よりも、“どう学び、どう成長していくか”の設計力が大切です。
自己PRとは、
「あなたがこれまでどう働いてきたか」+「これからどう活かすか」を描く提案書。
この視点を持てば、未経験職種でも確実にチャンスは広がります。
まとめ
未経験職種の自己PRは、“経験がない”ことを恐れず、
「これまでの経験をどう変換するか」で勝負する。
押さえるべき3つのポイント:
・過去の経験を具体的に描く
・応募職種との接点を言語化する
・成長・貢献の未来像で締める
転職は「勢い」ではなく「設計」。
未経験こそ、“自分を翻訳する力”が問われる。
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
未経験職種への転職戦略・自己PR添削・スキル転用設計を一気通貫で支援しています。
“経験ゼロから採用される自己PR”を一緒に設計しましょう。


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