
「どの企業にも同じ履歴書を出していませんか?」
転職活動では、多くの人が“1枚の履歴書”を複数の企業に使い回しています。
しかし──人事の立場から見れば、それは「本気度が伝わらない履歴書」です。
私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界の元人事部長として、
累計1万人以上の応募書類を見てきました。
同じ経歴でも、「その企業向けに言葉を変えるだけで通過率が2倍に上がる」という事例を何度も見てきました。
履歴書は、あなたの経歴を伝える書類ではなく、
「その企業にとって、なぜあなたが必要か」を示すプレゼン資料です。
本記事では、採用現場で実際に見てきた成功・失敗の実例をもとに、
応募企業別に履歴書をカスタマイズする実践的な方法を解説します。
「履歴書は1枚で十分?」──人事の本音
多くの求職者がこう思っています。
「どうせ職歴や学歴は同じだから、どの会社にも同じ履歴書でいいでしょ?」
しかし、人事の視点は違います。
人事が見ているのは「経歴の事実」ではなく、“この人が自社に合うか”。
同じ経歴でも、「どの経験をどの順序で書くか」「どんな表現を使うか」で、
“伝わり方”はまったく変わります。
同じ経歴で通過率が倍になったAさんの例
30代・営業職のAさん。
大手企業に8社応募していましたが、書類通過率はたったの12%。
そこで私は、Aさんの履歴書を応募企業別に3種類に分けてカスタマイズしました。
| 応募先 | 履歴書のアレンジ方針 | 結果 |
|---|---|---|
| IT系企業 | デジタル営業・オンライン提案の経験を強調 | 通過 |
| メーカー系企業 | 取引先との信頼関係・長期取引の実績を強調 | 通過 |
| ベンチャー企業 | 自主提案・成果報酬制度への対応力を強調 | 通過 |
同じ経歴でも、「企業が求める要素」に合わせて見せ方を変えたことで、
通過率は12%→58%まで上昇。
履歴書は“経歴を並べる”書類ではなく、“企業に合わせて翻訳する”書類なのです。
企業が履歴書で見ている“3つの軸”
人事が履歴書でチェックしているのは次の3点です。
| 軸 | 内容 | 採用意図 |
|---|---|---|
| ① スキルの適合性 | 仕事をこなせる経験・資格 | 即戦力かどうか |
| ② 価値観の一致 | 企業理念やビジョンとの共感度 | 組織文化に合うか |
| ③ 成長・貢献意欲 | 志望動機・学び姿勢 | 長期的に活躍できるか |
つまり、“スキルだけでなく、企業の方向性にどれだけ寄せられているか”が重要。
だからこそ、企業ごとに履歴書を調整することは必須です。
応募企業別に履歴書をカスタマイズする5ステップ
ステップ1:企業分析で「何を求めているか」を特定する
求人票だけでなく、以下の3点をチェックします:
- 企業理念・ミッション(採用ページや代表メッセージ)
- 社員インタビュー記事(どんな人物が評価されているか)
- 仕事内容の中の“キーワード”(例:チームワーク/スピード感/データ分析)
人事視点:
求人票の“求める人物像”の中に、履歴書で強調すべきキーワードが隠れています。
ステップ2:職歴欄の「順番」を変える
人事は履歴書を上から順に読みます。
だから、“その企業が知りたい経験”を最初に置くことが鉄則です。
例:
- 【WEB企業】→「デジタルマーケ・SNS運用」経験を上に
- 【福祉施設】→「人との信頼構築・継続勤務」経験を上に
- 【建設企業】→「資格・安全管理・チーム調整力」を先頭に
同じ経歴でも順番を変えるだけで印象が一気に変わります。
ステップ3:志望動機を“企業の言葉”で書く
NG例:
貴社の事業内容に興味を持ち、これまでの経験を活かせると感じました。
改善例:
貴社の「地域課題をテクノロジーで解決する」という理念に共感し、
前職で培った法人営業力を活かして、自治体案件の提案に貢献したいと考えています。
人事視点:
企業サイトに載っている理念・事業ビジョンのフレーズを引用するだけで、
「ちゃんと調べてくれている」と感じます。
ステップ4:資格・スキル欄を“企業が求める順”に並べ替える
例えば、同じスキルでも並べ順で印象が変わります。
| NG例 | OK例(IT企業向け) |
|---|---|
| 普通自動車免許/Excel/PowerPoint/Googleアナリティクス/SEOライティング | Googleアナリティクス/SEOライティング/Excel/PowerPoint/普通自動車免許 |
人事は“最初の3項目”しかしっかり読みません。
企業に関連するスキルを上に書くことで「即戦力感」を演出できます。
ステップ5:自己PRを“相手の課題”と結びつける
NG例:
チームワークを大切にし、コミュニケーションを意識して仕事をしています。
改善例(福祉業界向け):
チームでの情報共有を重視し、保護者・職員・関係機関との連携を円滑に進める体制づくりに注力してきました。
改善例(WEB業界向け):
複数案件を同時進行する中で、クライアントと制作チーム間の調整役として成果を上げてきました。
ポイント:
自己PRは「自分の強み」ではなく、「企業の課題をどう解決できるか」を中心に書く。
NG例と修正例で見る“差が出る書き方”
| 項目 | NG例 | 改善例 |
|---|---|---|
| 志望動機 | 御社の業務内容に興味を持ちました。 | 御社の地域密着型ビジネスに共感し、地元での営業経験を活かしたいと考えています。 |
| 職歴 | 営業を担当。新規顧客対応や提案活動など。 | 法人営業として新規20社の開拓を担当。顧客リピート率を15%改善。 |
| 自己PR | 責任感を持って業務に取り組みます。 | チームの目標達成に向け、メンバーの進捗管理とモチベーション支援を行いました。 |
人事は「抽象的な表現」より「再現性がある具体表現」を重視します。
実際の企業別アレンジ例(3業界比較)
| 業界 | アレンジポイント | 書き方の例 |
|---|---|---|
| WEB業界 | 成果を数字で示す。スピード感・柔軟性を強調。 | 「月間PV10万規模サイトの改善でCVR20%向上を実現」 |
| 児童福祉業界 | 人柄・信頼性・継続性を重視。 | 「3年間同じ児童を担当し、発達支援計画の見直しを実施」 |
| 建設業界 | チーム調整力・安全意識・資格を明記。 | 「現場安全管理者として労災ゼロを3年間継続」 |
データで見る“カスタマイズの効果”
マイナビ転職2024の調査によると、
「応募企業ごとに履歴書・職務経歴書を調整している」人の書類通過率は平均42.3%。
一方、“使い回し”の応募者は23.8%にとどまっています。
(出典:マイナビ転職「転職活動実態調査2024」)
数字が示す通り、“ひと手間の差”が採用の合否を分けています。
行動プラン・セルフワーク
「5分でできる“応募企業別カスタマイズチェック”」
以下の質問にYES/NOで答えてみましょう。
- 履歴書の志望動機に、企業名・理念を入れているか?
- 求人票のキーワードを文章中に1つ以上取り入れているか?
- 職歴欄の順番を“その企業に合う経験”から始めているか?
- スキル欄を“応募企業が求めるスキル順”に並べているか?
- 自己PRが「自分の強み」ではなく「企業への貢献」で書かれているか?
YESが3つ以上なら“伝わる履歴書”。
2つ以下なら“使い回し型”のままです。
1社ごとに10分かけるだけで、通過率は確実に上がります。
履歴書は「自分のため」ではなく「相手のため」に書く
履歴書の本質は、「自分を売り込む」ことではなく、
「相手に伝わりやすく整理する」ことです。
人事は“完璧な経歴”よりも“誠実な準備”を評価します。
だからこそ、応募企業ごとに手を入れる人は、
必ず面接に呼ばれやすくなります。
まとめ
履歴書を企業別にカスタマイズする最大の目的は、
「あなたの経験を、企業の言葉で翻訳すること」。
それができる人は、書類だけで“採用後の姿”をイメージさせます。
転職は「勢い」ではなく「設計」。
そして設計には、“相手目線”という視点が欠かせません。
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
企業ごとの履歴書・職務経歴書のカスタマイズ支援を実施中。
“この企業に刺さる応募書類”を一緒に設計します。


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