「自分の強みが分からない」「自己PRがぼんやりしている」
──そんな悩みを持つ人は、実はとても多いです。
転職・キャリア設計の相談に乗っていると、
「自分に特別なスキルはない」と口にする方が本当に多い。
でも、人事の立場から見ると、“強みがない人”は存在しません。
問題は、「強みを発見できていない」だけ。
しかもその強みを“数字”で語れていないために、
人事に伝わる自己PRになっていないのです。
私は、WEB業界・児童福祉業界・建設業界の元人事部長として、
これまで1万人以上の職務経歴書を見てきました。
今も「企業向け採用支援サービス」を提供する立場から断言します。
強みとは、特別なスキルではなく、
「一貫して成果を出せた経験」を数字で言語化したもの。
本記事では、
・自分の強みを見つける自己分析のやり方
・強みを“数字で語る”実践メソッド
・自己PRに転用できる構成例
を、元人事の経験を踏まえて具体的に解説します。
「あなたの強みは何ですか?」に即答できますか?
この質問に、3秒で答えられない人は少なくありません。
でも実は、人事はこの質問を“経験整理力”のテストとして見ています。
なぜなら、強みとは「自分がどんな場面で力を発揮してきたか」を
一言で説明できるかどうかで決まるから。
逆に言えば──
「頑張ってきました」「真面目に取り組みました」では伝わらない。
なぜならそれは、誰にでも言える“形容詞の自己PR”だからです。
自己PRが通らなかったAさんの例
30代・営業職のAさん。
職務経歴書の自己PR欄にはこう書かれていました。
「私は責任感が強く、与えられた仕事を最後までやり遂げるタイプです。」
この文章、人事としては“印象ゼロ”。
評価できる材料がなく、面接にも呼びづらい内容です。
そこでAさんに、過去の業務実績を一緒に振り返ってもらいました。
すると、こんなエピソードが出てきました。
・新規開拓で担当エリア売上を前年比130%に伸ばした
・既存顧客の契約更新率を60%→85%に改善した
この数字を基に自己PRを書き直した結果──
書類通過率が15%→58%にアップ。
つまり、「数字で語れる強み」があるだけで、
自己PRの説得力は数倍に跳ね上がるのです。
人事が“響く”と感じる強みの3条件
人事の採用判断は感覚ではなく、構造的です。
「この人は活躍できるか?」を判断する際、自己PRで見るのは次の3つ。
| 評価軸 | 内容 | 人事が求める要素 |
|---|---|---|
| ① 一貫性 | どんな状況でも発揮されているか | 成果・行動の共通パターン |
| ② 数値化 | どのくらい成果が出たのか | 客観的な指標(%・件数・期間) |
| ③ 貢献性 | 企業にどう活かせるか | 他者や組織への影響・再現性 |
つまり、強みを“数字と行動”で語るほど、説得力が増します。
強みを見つける自己分析5ステップ
ステップ①:「過去3年間」で成果を出せた出来事を3つ書き出す
大きな成果でなくてOKです。
たとえば──
- 案件を最後までやり遂げた
- クレーム対応で感謝された
- 新しい仕組みを提案して採用された
- 教育係として後輩が成長した
コツ:
「頑張ったこと」ではなく「うまくいったこと」を選ぶ。
感情ではなく、“結果”を軸に振り返るのがポイントです。
ステップ②:その成果を“行動の視点”で分解する
各エピソードについて、次の質問に答えてください。
- どんな課題・問題があった?
- そのとき、あなたはどんな行動をとった?
- 周囲からどんな反応や評価を得た?
- 結果として、どんな成果が出た?
この質問を繰り返すことで、“自分らしい行動パターン”が見えてきます。
ステップ③:数字・比較・期間で「成果」を明確にする
同じ内容でも、数字を入れるだけで印象が変わります。
| Before | After(数字入り) |
|---|---|
| 売上を上げました | 売上を前年比120%に改善しました |
| 顧客対応を頑張りました | クレーム対応件数を月5件→1件に削減しました |
| チームで協力しました | 3名のチームをまとめ、納期を2週間短縮しました |
数字は「件数・割合・期間・規模・頻度」で表せます。
どれか1つでも入るだけで“客観的な成果”になります。
ステップ④:3つのエピソードから“共通点”を探す
あなたがどんな仕事でも発揮している共通の行動は何ですか?
それが“再現性のある強み”です。
| エピソード | 行動パターン | 共通要素 |
|---|---|---|
| 顧客対応で評価された | 相手の話を丁寧に聞いた | ヒアリング力 |
| 新人教育で成果 | 教える際に相手の理解度を確認した | コミュニケーション力 |
| トラブル対応で改善 | 原因を分析し、再発防止を提案 | 課題解決力 |
このように「自分の行動に共通するキーワード」を見つけることで、
あなたの“軸となる強み”が見えてきます。
ステップ⑤:テンプレートに当てはめて言語化する
私の強みは、〇〇です。
前職では〇〇に取り組み、△△という成果を上げました。
この経験から、〇〇な課題に対しても前向きに改善策を考え実行できると考えています。
例:
私の強みは、課題を整理して改善策を提案できる力です。
前職では営業プロセスを見直し、月の訪問件数を20%削減しながら契約数を10%増加させました。
貴社でも効率と成果を両立する仕組みづくりに貢献したいと考えています。
数字で語る「強み別」自己PR例3選
強み①:課題解決力
私の強みは、問題の原因を分析し改善につなげる力です。
前職では業務フローを見直し、報告書作成にかかる時間を1件あたり30分短縮。
その分、顧客対応時間を増やし、顧客満足度調査で前年比15%の改善につなげました。
ポイント:
課題 → 行動 → 成果の3点セット。
数字で“結果の影響範囲”がわかる。
強み②:継続力
私の強みは、地道な努力を継続できる粘り強さです。
保育士として同じ児童を3年間担当し、家庭・学校と連携しながら支援を継続。
登園率を60%→90%に改善し、保護者からも「安心して任せられる」と評価をいただきました。
ポイント:
「期間」と「関係性」を数字化して誠実さを可視化。
強み③:チームマネジメント力
私の強みは、チーム全体の力を引き出すマネジメント力です。
建設現場で3名の職人をまとめ、工期短縮と安全管理を両立。
年間10件の現場で労災ゼロ・納期遅延ゼロを継続しました。
ポイント:
安全・納期といった“業界共通のKPI”を明示すると信頼感が高まる。
自己分析を「数字化」するチェックシート
| 観点 | 数値化の切り口 | 記入例 |
|---|---|---|
| 成果 | ○○%改善/○○件増加/○○日短縮 | 売上120%達成、残業時間月15時間削減 |
| 貢献範囲 | ○○人/○○部署/○○拠点 | 5名チームのリーダーとして調整 |
| 継続期間 | ○年/○ヶ月/○回継続 | 3年間同児童を担当 |
| 効果 | 顧客満足度/再契約率/事故件数 | クレーム率20%→5%に減少 |
自分の実績をこうして“数字の素材”として棚卸しすると、
職務経歴書・面接どちらにも流用できます。
データで見る「数字で語れる人は通過率が高い」
dodaが2024年に行った調査では、
書類選考通過者の約72%が「職務経歴書・自己PRで成果を数値で表現していた」と回答。
一方、数値表現のない応募書類では通過率が38%に留まりました。
(出典:doda転職求人倍率レポート2024)
数字は「自分の努力を客観的に証明する唯一の材料」。
採用担当にとって、数字は“信頼の言語”です。
行動プラン・セルフワーク
「明日からできる“数字化自己分析ワーク”」
・紙に「うまくいった経験」を3つ書く
・各経験に「成果を測る数字」を1つずつつける
・「なぜ成果が出たのか?」を一言で説明する
・3つの答えに共通する“行動”を抜き出す
・それを「私の強みは〜」の形に整える
たとえ小さな数字でもOK。
たとえば「提出期限100%遵守」も立派な成果。
自分の努力を数値で“見える化”することで、自信が生まれます。
強みは“見つける”より“構造化する”
多くの人は「特別な強みを探そう」としますが、
人事が評価するのは“再現できる行動”です。
つまり──
「いつもやっていることを整理し、数字で説明できる人」
が、最も信頼される。
そして数字で語れる人は、面接でもぶれません。
「なぜ成果を出せたのか?」と聞かれても、構造的に説明できるからです。
まとめ
強みとは、才能ではなく「再現性のある行動の積み重ね」。
その行動を数字で言語化することで、
あなたの自己PRは“印象”から“説得力”に変わります。
転職は「勢い」ではなく「設計」。
そして設計には、“数字で語れる自己理解”が欠かせません。
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
強み発見のための自己分析セッションから、
数字化された自己PRの作成・添削までを一気通貫でサポートしています。
“自分の価値を言語化できるキャリア設計”を一緒に作りましょう。


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