
キャリア迷子にならないための最初の3年間
入社して3年。
「このままでいいのか」「自分のやりたいことが分からない」「転職した方がいいのか」──。
こうした悩みを抱える若手社会人は、想像以上に多いものです。
厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(2024年3月発表)」によると、
大学卒の3年以内離職率は31.2%。
つまり、3人に1人が入社3年以内に会社を離れています。
(出典:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況)
──私はこれまで、WEB業界・児童福祉業界・建設業界の3業界で人事部長を務め、
採用から定着支援、キャリア教育まで携わってきました。
その経験から断言できるのは、
「3年目で後悔する人」と「3年目で成長する人」には明確な違いがあるということ。
違いは、“キャリアを設計しているかどうか”です。
この記事では、3年目で「辞めなきゃよかった」と後悔しないための
新卒からのキャリア設計術を、データと実例を交えてお伝えします。
「3年で辞める」は本当に早すぎるのか?
「石の上にも3年」という言葉があるように、
社会では“3年働かなければ一人前ではない”という考え方が今も根強くあります。
一方で、「合わないなら早く次へ進むべき」という意見も増えています。
リクルートワークス研究所の「若手社員のキャリア意識調査2024」では、
入社1〜3年目の社員のうち、62.8%が転職を検討した経験があると回答。
(出典:リクルートワークス研究所 若手社員のキャリア意識調査2024)
つまり、今の若手の多くが「3年目の壁」に直面しているのです。
しかし、人事として多くの社員のキャリアを見てきた立場から言えば、
“3年働くこと”が目的化してしまうのは危険です。
大切なのは「3年間で何を得るか」を設計すること。
この“意図を持った働き方”こそが、後悔しないキャリアの第一歩です。
キャリア設計の空白期間が生まれる理由
なぜ多くの新卒が「3年目の壁」にぶつかるのか?
多くの若手が抱える根本的な課題は、
「自分の軸がないまま働いている」という点です。
入社直後は目の前の仕事や上司との関係に精一杯。
配属や人間関係、スキル習得に追われ、
“自分がどんな価値観で働きたいのか”を考える時間が取れないのです。
💡3業界の人事経験から見た「3年目離職のリアル」
| 業界 | 離職理由の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| WEB業界 | スピード感・成長プレッシャー・成果主義 | スキルを磨けば成長できるが、目的がないと迷子になりやすい |
| 児童福祉業界 | 理想と現実のギャップ・感情労働の負担 | 「子どもを支えたい」気持ちがあっても、制度疲弊で燃え尽きる人が多い |
| 建設業界 | 評価の不透明さ・上下関係・労働時間 | 努力が見えにくく、若手が「何をすれば評価されるか」が分かりにくい |
3つの業界に共通していたのは、
“なんとなく”で入社した人ほど早く辞めてしまうということ。
キャリアを設計しないまま走り出すと、
成長の方向が見えず、評価にもつながらない。
その結果、「自分は何をしているんだろう」と虚無感に陥るのです。
やりたいことが分からないまま3年を迎えたAさんの話
Aさん(当時24歳・男性)は、大学卒業後にWEB制作会社へ入社。
最初の1年は新しいスキルを学ぶのが楽しく、先輩にも恵まれ、順調なスタートでした。
しかし2年目になると、「上司の評価基準が見えない」「成長している実感がない」と悩み始めます。
3年目の面談で彼はこう言いました。
「自分が何を目指しているのか分からなくなってしまって…。
上司のようになりたいのか、別の道に進みたいのかも決められません。」
実はこの言葉、業界を問わず多くの若手社員が口にします。
児童福祉業界でも、現場リーダーの理想と現実の間で葛藤する職員が多く、
建設業界でも「毎日忙しいけど、自分の成長を感じない」という声を何度も聞きました。
人事の立場から見ると、Aさんのようなケースには3つの共通点があります。
- 自分の“得意・不得意”を理解していない
- 評価の基準や成長の方向を上司と共有していない
- 「自分の軸」を明文化していない
この3つを放置すると、どんなに環境が良くても「働く意味」を見失ってしまいます。
3年目で後悔しないためのキャリア設計3ステップ
STEP1:自己分析──自分の“価値観”を言語化する
キャリア設計の土台は「自己理解」です。
自己分析というと就活を思い出す人も多いですが、
社会人になってからこそ、もう一度立ち止まって考えるべきプロセスです。
▶︎やってみよう:価値観ワーク
- 「仕事で嬉しかった瞬間」を3つ書き出す
- 「仕事でストレスを感じた瞬間」を3つ書き出す
- それぞれの共通点から、自分が大切にしている価値観を3語にまとめる
(例:挑戦・信頼・安定・感謝・成果など)
元人事のアドバイス
キャリアは“得意”より“続けられること”で決まります。
一時的な情熱ではなく、“疲れない働き方”を探ることが長期安定の鍵です。
STEP2:業界・職種分析──“自分が伸びる環境”を見極める
次に重要なのは、環境選びです。
たとえスキルがあっても、評価制度が不明確な職場では伸びにくい。
▶︎チェックリスト:成長できる会社の見極めポイント
- 1on1面談やフィードバックの仕組みがある
- 先輩社員が学びを共有する文化がある
- 目標設定が上司主導ではなく“対話型”で行われる
- 失敗を咎めず“改善”を重視する風土がある
3業界の比較から言えること
- WEB業界は成果主義が強いが、スキルアップの機会は多い
- 児童福祉業界は人間関係中心。理念に共感できるかが定着の鍵
- 建設業界は上下関係が明確。信頼関係を築ける人が評価されやすい
「自分が評価されやすい文化はどこか?」を見抜くのが、人事経験者としての最大のポイントです。
STEP3:キャリアマップを描く──3年単位で目標を設計する
キャリア設計は“未来を可視化する作業”です。
3年単位で区切ることで、今やるべきことが明確になります
▶︎3年キャリアマップの例
| 年次 | フェーズ | 行動目標 |
|---|---|---|
| 1年目 | 基礎スキルの習得 | 社内の仕組みを理解・業務の全体像を掴む |
| 2年目 | 得意分野の確立 | 小さなプロジェクトを主導・資格やスキル取得 |
| 3年目 | 役割拡張・後輩指導 | 成果の見せ方を学び、次のステージを選ぶ |
実践ワーク
「3年後にどうなっていたいか」をA4用紙1枚で書き出してみましょう。
“具体的に書くほど行動が変わる”のは、人事の現場でも実証済みです。
“3年目の壁”を越えた先にある成長の姿
キャリアを設計した人は、3年目を「次のステージの準備期間」として捉えています。
たとえば──
- WEB業界のBさん(25歳):入社時からマーケティングを学び続け、3年目でSNS運用の責任者に。年収も400万円→520万円にアップ。
- 児童福祉業界のCさん(26歳):現場で悩んだ経験を活かし、4年目から新任職員の教育担当に抜擢。
- 建設業界のDさん(27歳):資格を2つ取得し、主任として現場のリーダーに昇進。
彼らに共通するのは、「3年目で辞めよう」と考える前に、
“自分がどう成長したいか”を明確にしていたこと。
3年目で後悔する人は「環境のせい」にする。
3年目で成長する人は「環境をどう活かすか」を考える。
この差が、数年後のキャリア格差になります。
明日からできる3つのキャリア行動
1. 「楽しい」と感じた瞬間をメモする
仕事中の“ポジティブ感情”を言語化することで、自分の得意分野が見えてきます。
スマホのメモでもOK。1日1行で十分です。
2. 上司や先輩に「なぜこの仕事を続けているのか」を聞く
人のキャリアストーリーには、必ず“価値観”のヒントがあります。
「この人みたいになりたい」「こうはなりたくない」──どちらも気づきです。
3. 3年後の自分を“1行で”書く
例:「福祉業界で、現場と仕組みをつなぐ人になる」
書くことで、行動が方向性を持ちはじめます。
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転職後の後悔を防ぐ“キャリアの棚卸し”とは
まとめ|転職は「勢い」ではなく「設計」
転職も、現職を続ける選択も、
どちらが正しいかは「自分が何を大事にしたいか」で決まります。
キャリア設計とは、自分の“軸”を見つけること。
そしてその軸は、社会に出てからこそ育て直すものです。
3業界で人事をしてきた経験から言えるのは──
「自分を理解している人ほど、キャリアの迷いが少ない」ということ。
焦らず、比較せず、まずは自分を言語化するところから始めましょう。
💬最後に
「キャリアアドバイザーの転職相談サービス」では、
自己分析・市場分析・求人戦略を一気通貫で支援。
“転職してよかった”と思える道を一緒に設計します。


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